Akiko Yamanaka
「睡眠」が人間関係を大きく左右するって本当!?

「睡眠」が健康に大きな影響をもたらすことはもちろん、生産性や集中力を高めるためにも重要な要素になっていることはよく知られています。でも、十分な「睡眠」をとることは、私たちの「人間関係」にも大きな影響を及ぼすことがあるって知っていましたか?
睡眠不足の時の脳の働きは違う!?
学術雑誌の「ネイチャーコミュニケーションズ」に最近発表された研究によると、しっかりと睡眠をとった人と一晩眠らなかった人が他人と対面した時に、脳がどのように変化するかを調査したところ、大きな違いが明らかになったと言います。それぞれの被験者は、見ず知らずの他人が遠くから近づいてくる映像を観させられ、自分に近づきすぎていると感じた瞬間にボタンを押すように指示されました。またそれと同時に、被験者たちの脳の動きも調べました。
そんななか、一睡もすることができなかった被験者は、見ず知らずの他人が近寄ってきた時に、きちんと睡眠をとった人よりも明らかに早く、他人に近寄るのを止めるよう求めたそうです。また、十分な睡眠をとることができなかった被験者たちの脳のパターンを調べてみると、社会性を司る神経回路が大きく反応し、他人の心の状態や意図、信念、思考、推測などを推測する心の機能が著しく低下していることが分かったと言います。

私たち人間には、他者の感情を理解することのできる能力があります。友人が悲しんでいれば、ある程度は自分自身でもその悲しみに共鳴することができ、何か助けてあげることができるはずです。しかし、研究によると「睡眠」が不足していると、感情を共鳴したり同情したりする脳の働きが機能しにくくなることが分かっているようです。
「偏見」を持つ心は思考のプロセスが滞った時に悪化する
それでは「睡眠」は、私たちが他人に「偏見」を持つ心をも左右するのでしょうか? 「睡眠」と「偏見」の直接的な関連性はまだ明らかになっていないものの、「睡眠」が思考のプロセスに大きな影響を与えていることは間違いなく、自分たちとは異なるタイプの人と接触した時に、睡眠不足によって相手を判断する思考力が衰えるという考えは必ずしも極論とは言えないはずです。
加えて、研究によれば「睡眠」を十分にとることで、私たちは疎外感を感じにくくなるということも分かっているそう。つまり、自分たちとは違うタイプの他人と遭遇し恐れを感じた時でも、よく眠っていれば、相手に拒絶感を感じることが少なくなると考えられています。

さらに「睡眠」を十分に取ると、他人を「ステレオタイプ」化して見る傾向が少なくなる一方で、逆に「睡眠」不足になると、他人を「ステレオタイプ」化しがちになる傾向もあると言います。特に、自分とは異なる社会的集団に属している人たちに対して、もともとネガティブな印象を抱いている場合は、その傾向がさらに顕著になることが分かっています。
良好な人間関係はまずは質の高い睡眠から
もちろん、「睡眠」だけが私たちの「人間関係」に大きな影響を及ぼすわけではなく、私たちの「人間関係」が「睡眠」に大きな影響を与えることもあります。もし、家族や友人と喧嘩してしまったり、偏見や差別に直面してしまったり、誰からか拒絶されてしまったと感じた時などは、眠れない夜を過ごすことも多いものです。
どうしても眠れない。そんな時は、日中にエクササイズを行ったり、太陽光をしっかり浴び、夜はタブレットや携帯、テレビなどのブルーライトを発する電子機器の使用、午後のカフェイン摂取、アルコールの摂取、夜遅くの食事などを控え、また就寝時の寝室の温度を20度に保つといった工夫をし、安眠を心がけるようにしてみましょう。