• Akiko Yamanaka

ありのままの自分を受け入れてストレスに強くなるエクササイズとは?


人生には、喪失感や、不安、悲しみ、苦しみはつきもの。生きていれば、誰もが必ず経験するもので、決して避けて通ることができないものです。でも、そんな辛い経験をした時に、心の痛みに抵抗しようとすればするほど、その痛みが強くなっていくことに気がついたことはありませんか?

人は、まず苦難を経験すると、その後に大きな心の痛みに襲われることがよくあります。仏教にも「二番目の矢」という考え方があると言われていますが、これは、人は一本目の矢(実際の苦難)に打たれて慌てふためき、動揺し、対処できないまま二本目の矢(心の痛み)に打たれてしまうという考え方だそう。

私たちの心は、実際に苦難に直面すると、その瞬間だけでなく、その後も後を引いてより大きく苦しみ続けると言われています。それは、起きてしまった苦難や困難に対して、「こんなはずではなかった」と現実を受け入れることができず、自責の念に囚われることで、苦しみがより深くなっていくことが原因なのだとか。

自分を責めることで慢性的なストレスになる可能性も

セルフ・コンパッション研究の第一人者で、米テキサス大学オースティン校で教育心理学の准教授を務めるクリスティーン・ネフは、「自分を批判したり責めたりすることは、身体の自己防衛システムと密接な関係がある」と明かします。自己防衛システムは、危険を察知した際、瞬時に脳の中で本能的に起動するため、「自分への批判や自責の念も、何か困難に直面した時に反応してしまう人間の本能の表れである」と言います。


ところが、自分を批判したり責めたりする心のストレスは、慢性的なストレスとなり、不安障害や鬱を引き起こす可能性もあると言われており、心と身体の健康にも大きな影響を及ぼしてしまいます。そうならないためにも、まず一番のカギとなるのが、「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」という対処法だとネフ准教授は語っています。

友人に語りかけるように自分に語りかけるセルフ・コンパッション(自分への思いやり)のやり方は、あなたのお友達が苦難に直面している時に、あなたがお友達を思って慰めるように自分自身へも語りかけることだとネフ准教授は説明します。もちろん、その苦難が、友達(または、あなた)の責任によるものだとしても、力不足だと感じていたとしても、単に人生の困難な通過点だったとしても、辛い時は誰しも(自分自身も)慰めの言葉が必要だと言います。


そして、マインドフル(今、この瞬間自分に起きていることを客観的に観察する)の精神で自分の直面している痛みを観察し、「自分はなぜ苦しみを感じているのか、それはどのような苦しみなのか」と冷静に分析することから始めることが大切なのだそう。また、ネフ准教授は、「苦しみと向き合う時には、決して悲劇のヒロインになった気分にならず、またその苦しみを大袈裟に脚色したり、ドラマチックにしないことがポイント」だと注意を促しています。

「自分への思いやり」と「自分への哀れみ」との違いは?

セルフ・コンパッション(自分への思いやり)と聞くと、「セルフ・ピティ(自分に対する哀れみ)」と勘違いしてしまうという人が多いそうですが、実は「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」と「セルフ・ピティ(自分に対する哀れみ)」は似て非なるもの。「セルフ・ピティ(自分に対する哀れみ)」は、「私ってかわいそう」と自分だけが被害者であると思いがちになるのに対して、「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」は、「人は誰でも人生において苦難に直面する」ということをしっかり認識することができると考えられています。

研究によると、「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」ができている人たちは、自分自身の苦痛にフォーカスするよりも、将来の明るい展望について話すことが多いことが分かっているそうです。ほかにも、そういった人たちは、ネガティブな出来事や考え方に思いを巡らすことが少ないという結果も出ており、「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」が、いかにメンタルヘルスにも良い影響を及ぼしているかが分かります。

ネフ准教授によると、マインドフルネスのセルフ・コンパッションを実践する時には、まず自分自身に「今、自分が経験していることはいったい何か?」と問いかけ、そして「今、自分が一番必要としている事はなに?」と語りかけてあげることがポイントだと言います。また、「自分が今、直面している苦難の全体像を観察」し「困難に立ち向かっている時の自分に優しくなる」ということを心がけることが大切だと話しています。