Akiko Yamanaka
「なんでできないの?」他人にイライラしてしまうのは自己肯定感の低下が原因かも?改善のための4つのステップ

私たちは、働き、休み、時に旅に出で、海に行ったり、ハイキングをしたり、キャンプをしたり、あるいは買い物に行ったり、美味しいものを食べに行ったり、スパに行ったり、映画を見に行ったりしながら、生活の義務を果たすことと自分を解き放つことのバランスをとりながら生きています。ところが、シンプルな生活を思い通りに送ることって、実はなかなか難しいことも事実。仕事でもプライベートでも、人間関係は時に複雑化していくものであり、またSNSの発達によって人間関係はさらに複雑化していく傾向にあります。
そんななか私たちは、あらぬ批判を浴びたり、納得できない評価を受けることも多くなり、それを繰り返すうちに、自分に自信が持てなくなったり、自己否定につながってしまう負のサイクルに陥ってしまうことがよくあります。
しかし、自己評価が低くなってしまうことで他人と自分を比較するようになってしまったり、コンプレックスが強くなって自分を卑下したり、あるいは自慢話をしてしまいがちになったり、自分だけでなく他人にも厳しくなってしまうことがあります。そうなると「なんでこんなことができないんだろう!」という相手への苛立ちが強くなり、仕事やプライベートでもトラブルが多くなってしまう傾向があるようです。
そうならないためにも、心がけておきたいのが「セルフコンパッション」です。自分への「客観的な」思いやりの気持ちを持つことが、心に安定をもたらし、決してエゴではなく、謙虚さを兼ね備えた、バランスの取れた自己評価を持つことに繋がると言われています。
そこで今回ご紹介したいのが、Vipassana Hawaiiの創設者で上部座仏教の哲学やメディテーションを教えるミッチェル・マクドナルドが20年ほど前に提唱したRAINという「セルフコンパッション」法です。マインドフルネスを実践するにあたって、とても取り入れやすいメソッドなので、日常的なマインドフルネスの練習にもオススメです。
RAINコンパッション法は、RAINの頭文字をとった4つのステップからなります。
R-Recognize What’s going on(何が起こっているのが把握する)
A-Allow the experience to be there, just as it is(その状況をそのまま受けい
れる)
I-Investigate with kindness(思いやりの気持ちを持って、観察する)
N-natural awareness, which comes from not identifying with the experience(過去の経験に囚われない、自然な気づき)
それでは、今度は一つ一つのステップについて学んでいきましょう。
R-Recognize What’s going on(何が起こっているのが把握する)

まずは、意識的に自分の考えや感情、行動などを把握してみることから始めてみましょう。自分に自信が持てない時は、自分に対する自問自答や、羞恥心や恐れ、不安感などが沸き起こっており、体にネガティブな負荷がかかっているはずです。そんな時、体に感じる特別な感覚があるかどうか、よく意識して感じてみてください。
人によって、どう感じるか、どうリアクションするかもそれぞれ異なります。ある人は、自分自身の価値を証明するために、様々なことに取り組んだり、アピールしようとする人もいるでしょう。また、ある人は失敗を恐れて、何もできなくなってしまうという人もいるかもしれません。いずれにしても、こういった行動は被害者意識を強くしたり、他人に攻撃的になったりと、健康的でない側面が多く付きまといます。
私たちは常に、人の目や他者からの評価を気にしてしまうことがありますが、こうした感情は、純粋な気持ちで人生を楽しむ機会を遠ざけてしまうことにもなってしまいます。こうした感情に飲み込まれないためにも、まずは、いかに私たちが日頃から他人の目を気にして、本当の自分自身とのギャップに苦しみ、葛藤をしているかに目を向けるべきでしょう。
A-Allow the experience to be there, just as it is(その状況をそのまま受けいれる)
次に、今現在、あなたが実際に持っている考えや感情、感覚、その全てを受け入れることから始めてみてください。人は誰でも嫌な経験をすると、「“〜とはこういうものだ”という固定観念を積み上げる」あるいは「何も感じないようにする」または「違うことで意識を紛らわす」という3つのいずれかのリアクションをとってしまいがちになります。
しかし、大事なのは、今持っている感情を無理に正当化することでも、避けることでもなく、ただシンプルに一息ついて、今経験していることをそのままの形で受け止めることなのだそう。今自分が感じている思考や感情、体に感じる感覚をそのままの形で受け入れること、しかし、だからと言って私たちが弱い人間である、また価値の低い人間であるという考え方に結びつけないことがカギとなります。

I-Investigate with kindness(思いやりの気持ちを持って、観察する)
私たちが持つ、純粋な好奇心や、真実を知りたいと思う素朴な気持ちで、今私たちが経験していることをじっくりと観察してみることは、自分を見つめ直す点でとても重要なことです。そして、ただシンプルに「私の中で起こっていることは、いったい何?」と自分自身に聞いてみるといいかもしれません。そして、自分自身の意識をより鮮明に理解するために「体は今どんなふうに反応しているのか?」あるいは「私はいったい何を信じているのか?」また「私の感情は、私から何を引き出そうとしているのか?」などと、思いやりを持って、細かく分析してみることも大事です。そうすることによって、動揺してしまったり、虚しい気持ちになってしまうこともあるかもしれません。しかし、そこから沸き起こる隠れた自己否定の感情を見つけ出す大事なステップと言えるでしょう。また、普段様々な感情の下に埋もれていた自己否定の感情を摘み出すチャンスでもあるのです。
私たちは、自分の感情の全てを意識して観察しない限り、無意識のうちに自分の感情に振り回された状態で物事を判断してしまうことになります。自分自身でも把握できていない感情に振り回されてしまえば、冷静さを欠き、偏った目線で物事を見ることになってしまうでしょう。そうならないためにも、まずは自分自身の心の中をクリアにしておく必要があるのです。
N-natural awareness, which comes from not identifying with the experience(過去の経験に囚われない、自然な気づき)
最後のステップでは、自分の直感を頼りに、優しく、オープンな気持ちで、自分の自然な感覚で物事を判断し、行動できるようにしてみましょう。RAINの最初の3つのステップでは、目的意識を持った行動が必要になりますが、最後のNのステップでは最初の3つのステップを実践したことによる成果の部分が多くを占めます。R.A.I.のステップを実践することによって、本来の自然な自分の姿へと戻る流れを作り出すことができるようになると言われています。最後のステップでは、その流れに身をまかせながら、自然な感情の気づきを味わうことができるようになるでしょう。
RAINは一度だけの瞑想のような短期的な癒しでも、覚醒をもたらすものでもありません。しかし、RAIN法を練習、または実践することによって、思いやりの気持ちを持ちやすくなったり、温かい気持ちになったり、オープンマインドになったり、今までと違った考え方に触れることができるようになると言われています。RAINは、自分自身への疑いの気持ちや恐怖心と向き合い、癒していく、生きるための練習とも言えるかもしれません。何度も繰り返してみることで、少しずつ自分を取り巻く環境が安定していくように感じられるようになるでしょう。